炉台について

薪ストーブを乗せる床を<炉台>といい、薪ストーブと壁との距離が近い場合など熱を遮るためのレンガ等でつくられた壁を<遮熱壁>といいます。

必要な理由、大きさ、材質などを紹介します。

炉台・遮熱壁の役目

炉台は設置場所下部にある合板や根太などの可燃物の低温度炭化を防ぎ、薪ストーブ直下への輻射熱や薪ストーブの4本の脚からの熱伝導を炉台全体に分散します。

また、薪をくべるためドアを開いたときに焚いている薪がはせて床などに飛び散っても焦がさないような役目の他、溜まった灰を灰取バケツなどに移す場合、バケツの下が可燃物の床板などでは灰が熱い時には同じように焦げてしまいますので床に不燃物の炉台が必要になってきます。

薪ストーブは他の暖房機器と違い、長時間焚くことが多く、長い時間炉台や遮熱壁に温度がかかっています。

熱伝導率の高い素材を使用しますと最初は炉台・遮熱壁の表面が熱くなりやがて熱が伝導して素材の後ろまで同じ温度になることもあります。

この温度が可燃物に伝わり260℃を超えるあたりで化学変化を起こし、低温度炭化や火災になりますので炉台や遮熱壁が安全上必要になってきます。

また、レンガや石などの比熱が大きい物質は暖まるまで時間がかかりますが暖まると冷めにくいため、蓄熱効果があり、薪ストーブが冷め始めたころ、そこから輻射熱を室内に向け発散しますのであたたかさが長持ちします。

炉台の範囲

炉台の保護範囲(大きさ)をどれくらいにするかを決定するためには、機種により製造者の設置基準書にその規模が表示されていますのでこの数字を基に設計します。

表示寸法は本体の背面、右面、左面、前面からの最低範囲寸法を示しています。

同時に煙突芯の位置などが決定します。

また、設置場所の壁や天井を板張りなどの可燃材料で仕上げる場合は製造者の設置基準と国交告示225号等の制約を見比べ、安全を確保することになります。

その他用いる材料により厚みなどが決定します。

>>>さらに詳しく 床の保護に用いる不燃材料の熱抵抗値の計算例

遮熱壁の範囲

製造者設置マニュアルは機種別にその規模が表示されていますのでそれに沿って設計します。

国土交通省告示第225号の適用対象となる建物の場合、幅、高さ等が製造者設置マニュアルより規模が大きくなる傾向にあります。薪ストーブを設置する部屋の内装を決定する折、範囲に影響しますのでご相談ください。

作成の場合、壁と遮熱壁の間に必ず空気層を設けます。

これらの寸法・形状は炉台の範囲を含め、安全と危険の境の問題ですので十分な検討が必要です。

炉台・遮熱壁の重量

炉台・遮熱壁は結構な重量になります。

床下地の補強や遮熱壁を自立させる工夫が必要です。

ヨツール社、F500の場合で計算してみます。

重量の計算例として(画像と関係ありません)

炉台と遮熱壁については普通レンガを使うとし、一本の形状寸法が100×210×60mmの普通レンガサイズで一本の重量を3kgで床の上に直貼りし、背面に遮熱壁を幅1,400mm×高さ1,200mmに積むとします。

炉台には6本半で12列、遮熱壁に控えを含め7本半で17段となり合計206本使用します。一本3kgで618kgになり目地のモルタルを含めると約670kg、薪ストーブの重量が200kg、煙突の内、掃除用自在から下の煙突重量10kg、薪が常時2束とし、薪置きなどを含め20kg、合わせて900kgの重量になります。実際にはこのほかに炉台に乗った人の重量や現在燃焼中の薪や燃え残りの灰なども加算されますので新築の場合などは炉台スペースは下からコンクリートでつくりたいものです。またコンクリートを施さない場合は下地の根太、大引きや床束などを重量に耐えられるよう補強することになります。

炉台と床の段差

大きく分けると3通りになりそれぞれよいところがあります。

床より高く

目線に近づきますのでガラス越しの炎が見やすい。床仕上げの上に施工。

床と同じ高さ

段差がないためつまずかない。仕上げ材の厚みに合わせ下地の高さ調整。

床より低く

段差に腰掛けられる。段差の熱対策のため炉台スペースが十分確保できること。

どの方法にするかは建築工事の設計と合わせて検討が必要です。

炉台と建築基準法などとの整合

薪ストーブを設置する部屋の壁に無垢板を張りたい。

天井に通る大きな桁を現わしたい。

など、山小屋風にしたい部屋にはこれまでそのままでは薪ストーブは取り付けられませんでした。

しかし、内装制限が緩和され、条件が満たされれば内装仕上げに木材を使うことができるようになりました。

このような場合、国交告示225号適用建物としての申請が必要です。

ストーブ等可燃物燃焼部分を計算し、遮熱板により難燃材の壁などにかかる熱を遮ることで設置が可能になりました。

また、国交告示225号適用建物としての申請をした場合、遮熱壁の高さが製造元が指定する遮熱壁の最低高さや幅と相違が出てきますので設計段階で検討が必要になります。

個々の選ばれた薪ストーブや設置条件により基礎となる計算と作図をこちらでいたしますのでご相談ください。

炉台の仕上げや厚み

床の保護及び、装備が必要なボトムヒートシールドの取り付けを怠りますと、燃えたおきや灰の落下、薪ストーブ下部からの輻射熱で火災の原因になります。

我国のように、薪ストーブや燃焼器具に関連する設置場所床面の規定がない場合でも、米国NFPA211や薪ストーブ製造者の設置基準書等を参考に実質的に安全であることが求められます。

以下に炉台床の設計の例を記載しました。

設計条件

  • 薪ストーブ本体をバーモントキャスティングス社製アンコールとします。
  • 炉台の下地は構造用合板や木質系床材等の可燃材料が施されている。

断熱性能を満たすため、薪ストーブ本体の製造元は熱抵抗値をR=0.187㎡K/W以上を要求しています。

>計算例(1)普通れんが(赤れんが 平使い)仕上げを計画

1)普通レンガ熱抵抗値 1mmあたり0.0016㎡K/Wですので

普通レンガ(サイズ60×100×210mm)を平使いにした場合、R=0.0016×60=0.096㎡K/W

2)要求値 0.187-0.096=0.091㎡K/Wが不足します。

3)床の上にケイ酸カルシウム板(t=12)+ラス網を追加します。0.0056×12=0.0672㎡K/W

4)接着層モルタル(t=36)を追加します。0.0007×36=0.0252㎡K/W

5)普通レンガ+モルタル+ケイ酸カルシウム板=0.096+0.0672+0.0252=0.1884㎡K/W

6)以上の計算で0.1884>0.187㎡K/Wの要求を満たしています。

普通レンガ(赤レンガ 平使い)仕上げ

>計算例(2)タイル仕上げを計画

1)タイル熱抵抗値 1mmあたり0.0007㎡K/Wですので

タイル(厚み9mm)仕上げにした場合、R=0.0007×9=0.0063㎡K/W

2)要求値0.187-0.0063=0.1807㎡K/Wが不足します。

3)下地にALC板(t=37)を追加します。0.0059×37=0.2183㎡K/W

4)接着層モルタル(t=10)を追加します。0.0007×10=0.007㎡K/W

5)タイル+モルタル+ALC板=0.0063+0.007+0.2183=0.2316㎡K/W

6)以上の計算で0.2316>0.187㎡K/Wの要求を満たしています。

タイル仕上げ

工事に用いる不燃材料の熱抵抗値の性能は製造元にて確認してください。

以下の一般的な不燃材料の熱抵抗値(1mmあたり)を資料より引用しました。

大理石材料名熱抵抗値(R)㎡K/W
セメントモルタル0.0007
ケイ酸カルシウム板0.0056
ALC0.0059
普通レンガ0.0016
耐火断熱レンガC種0.0024
タイル0.0007
大理石0.0005
御影石0.0006